樵日記・木霊斬り
今日出勤して予定表を見てみれば、
いつもの作業班と違えば、特殊車両も全車種出動、とな。
この物々しさは何ぞ?と思って現場に行ってみれば…。
”御神木”級の伐採やないかァーい!(°Д°;;)ウワァ...
細い路地の奥に構える、数百坪は下らない
立派なお屋敷の一角に凛と立つ、樹高25m以上、
直径も1.5m近い、クスノキ2本にトウヒ1本。
これらが神社の境内にあっても、全く遜色がないw
張り出した枝が電線の邪魔になれば、お屋敷の「持ち主」
からも伐採の依頼が出た、年に数度の特殊な案件。
作業前に清酒(ワンカップ●関)と清塩(伯●の塩)で
”お清め”をし、粛々と取り掛かる。
近隣の民家と電線を万一にも傷付けない様、
薄皮を1枚1枚剥がす様に、ロープやクレーンも使い、
慎重に木を”解体”していく。
完全通行止に装備や器具、伐り方まで初めてづくしなら、
ご近所の皆様も空を見上げ、行方を見守っている。
伐採は何とか無事に終わりましたが、
たった3本の木を切るのに、5名班で丸一日かかりました。
営業担当に聞けば、実はお屋敷は”空き家”で、
ご主人を早くに亡くし、残された奥様は
息子夫婦を頼り、今は関東在住なのだそう。
一方近隣からは、毎年路上に出る大量の落葉や、
嵐で倒れたらどうする、と苦情も出ていたらしい。
私より遥かに「年長」で”屋敷の鎮守”の筈が、
いつしか主を失い、果てには”厄介者”扱いされて
切株にされる運命には、物悲しい気分になりました…。
勿論、私にとって貴重な経験になったのですが。
何故か、最後の大型チェーンソーは新米の私が入れました。
時を経て 主失ふ 木霊らに 引導渡す 我も悲しき
つきのわ上等兵
男性/43歳/愛知県/会社員
2017-09-21 23:06