世界を震撼させる事件
シラウオのような美しい指先を保つためには、努力が必要だ。
バッグの中には、携帯用の小さめのハンドクリームを常備している。
今朝も電車の中で、ルーティンのメンテナンスをしようと取り出した。
… フ、フ、フタがない。
ガサツにガシガシ歩く揺れで、取れてしまったのか?
58年もムダに生きているが、歴史に残る大事件である!
バッグのポケットの中で繰り広げられているであろうサイコスリラー的な光景を、平穏に暮らしている君たちは想像できるだろうか?
それは、ゴジラが東京を踏み潰している光景よりもコワイ!
鬼太郎の友人達の妖怪が束になって襲って来ることよりもコワイ!
目玉オヤジが、欧米人になっていて青い目だったら?と考えることよりもコワイ!
部屋の隅を小さなおじさん達が楽しそうに駆け回っていることよりコワイ!
ワタクシは、恐ろしくてバッグの中を覗くことができない。
しばし、カラダが震えた。
コートは着ている。
寒いわけではない。
そう。
会社の鍵が、バイクの鍵が、ハンカチが、定期入れが、ハンドクリームをつなぎにして、油で揚げられる直前の天ぷら状態になっているであろうことに、足が震えるのである。
カカトの上がすぐお尻、というワタクシの短い足ですら震えるのだ。
この、世界を震撼させる大事態に、ペンタゴンはもう動いているだろうか?
もうSWATは配備されているだろうか?
あぁ! なんということだ!
この強靭な精神力を持ってしても解決不能なことが起こるなんて!
そぉっとのぞいて見た。
バッグのポケットは、闇の中にある。
深く深く、マリアナ海溝より深く、静かな世界へ分け入っていく。
そこでは、フタがニヤリと笑っていた。
不気味だ。
小さいくせに、してやったりという笑みを送ってきた。背筋に冷たいものが走った。
恐ろしくて、これ以上奥に進むことができない。
自分の臆病さに嫌気がさす。
だが、これを見なければ、
この現実を直視しなければ、
残りの人生はあり得ない!
ガンバレ、オイラ!
みなさま、どうぞ、楽しい週末を♪
╰(*´︶`*)╯♡
くみ
女性/65歳/東京都/黄色くみ広報室長
2018-03-24 08:55