一番大事なこと。
亡くなった母は美容師で、広島の山奥から東京へ修行にきた人で、先の大戦からまだ5年くらい、20歳の女性がひとりで10何時間も汽車にゆられて、よく来たもんだ、と思いましたけど。
昔ですから修行といえば、店舗 兼 住宅に住み込みで、先生の身の回りのお世話から、炊事・掃除・洗濯から入ったそうです。
落語家とか、あるいは、師匠から弟子へ、伝承を必要とする職人とか。今でも住み込みで、師匠の身の回りの世話から入る職種も世の中にはあるのでしょう。
うちの店でも掃除や洗い物から入るのは当たり前。みんなで休憩をすれば、お茶くみぐらいしてもらいます。
「そんな仕事とは関係ないことなどさせずに、さっさと技術を教えて欲しい」と、当然、思うことでしょう。
別に身分が低いものに小間使いさせてるわけじゃなくてね。
技術よりも顧客心理の把握と対応力が大事であって、その訓練といいますか。
どんな仕事でも最終的に商品を受けとる顧客がいるわけですけど、顧客の心理は常に変化します。
例えばウチで言えば、誰もがイタリアと、料理が好きで空腹なら、こんな簡単な話はないんです。時には「腹へってない」なんて人まで来るんですから(笑)
時間帯、天気・温度、表情や態度、持ち物、相手、懐具合、酒量などあらゆるファクターを図って、プラン・ドゥ・チェックして、満足度を担保しながら売上を立てなければ商売になりません。
落語家だって、その日の客層や、場のあたたまり方によってハナシを変えることができるのがプロだといいます。
手先の技術より、一番大事な技術は、想像力・思いやりや、気配りなんです。
僕のホスピタリティーの先生は、数々の有名なアミューズメント事業で講師を歴任してきたパイオニアなんですが、彼の持論のひとつに「身内に出来ないことは他人にもできない」というものがあります。
師匠や兄弟子といった身内にすら気配りできない者か、お客様の気配りなどできるわけがない、というわけです。
それに一芸に秀でれば、他のことも上達が早い。
料理だけが上手くて掃除は下手、なんて子はいませんから。
技術を磨くための技術を鍛える意味もあります。
若者の皆さん。
親御さんとか、上司とか、怒らせてませんか?
満足させてますか?(笑)
コーギモモ
男性/58歳/神奈川県/飲食業
2018-08-17 02:37