仁義なき戦い~モスラ編~
何かが飛んでいるのがすぐに分かった。
職場の扉の手前の電球の下で、それは飛来していた。
走光性の虫であることは明らかであったが、近付いてみて…こともあろうにモスであることに気付いた。
厳しい戦いになるだろう。
俺は直感した。
リンプンを撒き散らしながら意味なく飛来するモス…。
予想不可能な動きで電球から電球へと飛び回っている。
しかし、そこを通らねば職場にはたどり着けない…。
俺は近くにあったホウキを手にして、いざモスの下を通り過ぎようと試みた…。
その時である。
モスは急にホバリングをやめて俺の方に向かって来たのだ。
そして、俺の目の前でホバリングを始めた。
「…えっと…あなたは僕のご先祖様とかでは…ない…ですよね?」
「うん。違うよ!」
そんな会話が俺とモスの間で交わされた一瞬の後、戦いの火蓋は切って落とされた。
俺は近くの換気用の小窓を開け、そこへ向かってホウキでやつを誘導しようと試みた…。
ところが、すんでのところで電球へと向かってしまうのだ。
そして、小窓からは、あろうことかもう一匹、招かれざる客が飛来してきた。
1対2…。
勝ち目は五分五分かも知れない。
そう思った俺の頭にあの曲と共にある考えが浮かんだ。
モスラーやモスラー♪
ー電気を消してしまえばいい。
そう!そうなのだ。
やつらは光へ向かう性質がある。
ふふふ。お前達の求める光、それを俺が消してやるぜ!
喰らえ!パチッ……
…うぎゃあぁぁぁ…
次に断末魔をあげたのは俺の方だった…。
モスラの羽が俺の髪をかすめ、耳元で羽ばたく音がしたからだ。
…大丈夫ですか?!パチッ…
俺の部下が灯りをつけて駆け寄った。
灯りに再び照らされた俺は、ホウキを聖徳太子持ちで尻餅をついていた。
…やめろぉ!灯りを消すのだ!
…は、はい!…え?…うぎゃあぁぁぁ…
俺達はモスラーに惨敗した。
…次に俺が見たのは、俺達の前を後にして悠々と外の街灯に向かって飛んでいくモスラーだった…。
完
エリーマイラヴ
男性/45歳/東京都/総帥(so sweet)
2018-08-23 23:22