名前
夢枕獏 先生の『陰陽師シリーズ』は愛読書です。
主人公の安倍晴明がよく口にする『呪-しゅ』という言葉があります。
自然の摂理そのものであったり、人間が意図的に自然に介在することだったり、物語の中で広義に使われているわけですが。
モノの『名前』もまた呪である、と。
花なら花に名前をつけて呼ぶことで、はじめて花は人にとって存在する意味を持つ、とか。
紙で作った人形に、本人の髪の毛を一本差し込んで『名前』を書けば身代わりとすることが出来る、とか。
物怪に名を呼ばれて、返事をしてしまうと祟られる、とか。
名前という一種の呪文を唱えることで、無意味なものに形を与えることが出来る、といったような定義のことなんですが……
現代において、研究や学問っていうのは、発見や統計や定義に名前を付けることだと思うんです。
彗星に名前を付けるとか、ある現象を調査をして統計を取り、一定の傾向に対して、名前を付けるといったことの蓄積が学問であり、その名前が文字どおり『有名』になり、一般化すれば名付け親は株が上がるわけでしょう。
だからいろんなものに名前を付けたくなるんだろうけど、名前という呪文も使い方ひとつであって、名前がついたことによって、独り歩きして、受けとる側からしたら、名前を知らなければ漠然とした不快感ぐらいだったものが、病気として顕在化してしまうことも多いのではないかと思うのです。
特に精神の分野において。
例えば『ペットロス』や『育児ノイローゼ』
そんなもの、昔はなかった。
誰でも心配ごとがあれば睡眠不足や食欲不振ぐらいなるでしょう。
医者に言えば「『〇〇病』ですね。脳の〇〇ホルモンを抑制する薬を出しましょう」といわれ、友達に言えば「まぁ、いいから飲みに行こう」といわれ、祈祷師に言えば「キツネが憑いてる」と言われ、おかんに言えば「バカ言ってないで早くご飯食べなさい」と言われて終わり…
本当に専門的な治療が必要なケースはどれほどあるのか。実はいくつかは『気のせい』とか『病は気から』とか『思い過ごしも恋のうち』だったりするのかも……(。-∀-)
コーギモモ
男性/57歳/神奈川県/飲食業
2018-09-30 21:08