心を込めて案件。

イラストレーターとして独立したての頃あらゆる面で競い合っていたライバルがある時汚いやり方で私は仕事を横取りされてしまいました。それからしばらく彼とは疎遠になっていたのですが、数年後知人から彼がガンに侵されて入院生活を送っているという事が耳に入ってきました。私は過去のわだかまりを水に流して彼とじっくり話したいと思い、病院に見舞いに行きました。
しばらくぶりに会った彼の顔はやせ細り弱々しい声で「久しぶり！」と一言。
たくさん話したい事があったのに、何も話せませんでした。その後、彼は亡くなり、自宅に焼香に行った時にお母様から一通の手紙を渡されました。手紙の中は彼の弱った手で懸命に書かれていて、若い頃の私としのぎを削った事や私の仕事を横取りした件のいきさつなど、書かれていました。そして最後に私に「ごめんな、そしてありがとう。」と…私は涙が止まりませんでした。
彼のあの手紙は今私の宝物になっています。

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