女盗賊メアリー その四
焼き鳥の串で穴を開けた壁に張り付いて、ハイジと風船のペーターとの話の一部始終を聞いていたメアリーは、一人ほくそ笑んで、ポン☆と膝を叩いた。「ヨシ!これでメンツが揃った!」
盗賊のお頭のメアリーは、近々大きな盗みを企てていたのだ。
一世一代の大勝負だ。
その計画には、軽快な身のこなしができる助っ人が必要だった。
大店らしいを大店が少ない南アルプス村では盗みの仕事もなく、生活に困窮していた風船のペーターの上京は願ったり叶ったりだった。
ペーターの現状を聞いたハイジはさっそくカシラのメアリーに話を通した。
壁越しに、とうに事情を知っているメアリーだったが、むずかしそうな顔をして聞き入り、もったいぶってつぶやいた。
「そうかい。事情はわかったよ。若くたって分け前は均等割だ。けど、その分しっかり仕事しておくれ。うちじゃ、≪働き方改革≫ なんて言葉は通用しないからね!」
ハイジとペーターを不安にさせながらも、二つ返事で了解したメアリーは、心構えとしての『江戸における盗賊のオキテ 五カ条』をペーターに読んで聞かせた。
一、カタギの人を傷つけない。
一、女を泣かせない。(ホストか?)
一、子どもをグズらせない。(子守か?)
一、たべものを残さない。(定食屋か?)
一、金はキレイに使う。(洗剤に5分漬けてからブラシで磨き…って、そっちのキレイじゃない)
13才に満たないペーターには、今ひとつピン!とこない五カ条だったが、それを口にすると仲間に入れてもらえないのではないかと思い、マジメな顔で大きくうなづいてみせた。
何より、幼い頃から見知っているハイジと一緒に仕事ができることがうれしかった。
… そう、ペーターもハイジに想いを寄せていたのだった♡
くみ
女性/65歳/東京都/黄色くみ広報室長
2019-01-26 08:40