忘れられない山の思い出
本部長秘書お疲れさまです。
今から20年ほど前、夏に夫と北アルプスの奥穂高岳に登りました。上高地から二泊三日で登るのですが、二日目のお昼ころだったと思います。見通しのよいなだらかな場所で岩に腰掛けて休憩していたところ、すぐそばの岩に、だいぶ年配の男性が同じく休憩しておられました。その方は私たち二人をとても優しい眼差しで見ていました。話しかけられて少しお話をしました。今日は私たちと同じ奥穂高岳に行くこと、単独行であること、84才であることなどを穏やかにお話されました。奥穂高岳といえば、中級者以上向けの山ですし、ご高齢の単独行動と聞いて少し心配になりました。
その方は息子さんが若くして亡くなってしまい、今日はその息子さんの写真を持って登られているとのことでした。息子さんはスポーツマンで逞しく、山がとても好きだったとのこと。つらいお話ではありましたが、その男性の息子さんへの深い愛情を感じてとてもあたたかな気持ちになりました。
しばらくお話して私たちは出発しました。振り返ると男性は岩に腰かけたまま大きく手を振ってくれました。話している時から私は密かに、その息子さんは夫に似ていたのじゃないかなと思っていました。その方の夫を見る眼差しで本当に優しかったんです。
いつまでも忘れられない人ですね。
そして夫と息子は今日槍ヶ岳に登っています。
ジンベエザメ
女性/58歳/東京都/パート
2019-08-12 18:08