1989年1月5日〜2020年2月2日
女房と初めて会ったのは1989年の1月5日だった。
昭和が終わる二日前のことである。
彼女は福岡県出身で豊前在住。
私は東京都下の実家を出て埼玉の浦和で一人気楽に暮らしていた。
そんな時に親の知り合いが持ち込んできたのが見合い話。1988年の暮れも近い頃だった。
「会うだけ会ってやって、断っていいから、とにかく会うだけ会って。ね!」
無責任な話だと思ったが、自分も幼少の頃から知っている方なので無下に断れず。
本当に会うだけで良いのですね?と念を押して、会ってみたが……
当時、銀座三越の二階に喫茶ルームがあって、そこで御対面。
丁度、上野動物園でユウユウという赤ちゃんパンダの公開が始まったばかりだったので、しばし歓談の後「ユウユウ見に行く?」と尋ねたら、彼女は右腕を高く突き上げて「行きまぁ〜す!」と。
こいつ、おもろい女だな……と思った次第。
東京のど真ん中の人混みで右腕高く突き上げて、でかい声で「行きまぁ〜す!」
翌日福岡に帰った彼女とはその後2〜3回程か、手紙のやり取りをした。
その手紙のやり取りをするうちに「この人と結婚しよ」と決めた。
その年の9月15日に首尾よく結婚できたのだが、実は結婚式当日まで、私は彼女の顔を5度しか見ていない。
こっちは埼玉に住み東京で仕事する身。
あっちは福岡の豊前に住み歯科クリニックにお勤め。
そうそう行き来できるはずもない。
見合いで一度、結婚の申し込みで二度目、結納で三度目、結婚式の打ち合わせやら新居への案内やらで四度目と五度目。
それだけしか会うことがなかった。
そんな具合に結婚できて、昨年の9月で30年が過ぎた。
燃えるような恋愛を経た末の結婚ではない。
何らかの打算が導いた結婚でもない。
この人と生きてたらオモロイに違いない、という感覚しかなかった。
彼女も、私がどれくらい稼げる男か、なんて考えなかったに違いない。ましてや40歳で会社を辞めて自営業になる奴だなんて、想像もしなかっただろう。
もちろん、お互い生身の人間である。30年の間、ずっと平穏だった訳ではない。それなりに波もあったし風も吹いた。
それでも、何とかなってきた。
2020年2月2日。
今日は女房の誕生日である。
あいつ、何歳だっけ……
58だ♪
鴻の親父(おおとりのおやじ)
男性/66歳/埼玉県/居酒屋やってます
2020-02-02 14:56