チャコ[2]
1986年11月。
高2の次兄が駅前で拾った茶トラの子猫。
次兄は幼なじみの家で飼ってもらえないか聞いてみると言った。
高1の私も友達に聞いてみると言うと、母が口を開いた。
「母さんは飼いたいな」。
その年の夏、体調を崩して仕事を休職した母。
子供たちは社会人となった長兄が家を離れ、高校生の私たちがイッパシにアルバイトを始め、親離れし始めたのを寂しく感じたのだと思う。働きづめで趣味を持たない母を癒すには絶好のタイミングで子猫は我が家にやってきたのだ。
母は「子猫に名前、つけなきゃ」そう言って”元“化粧道具入れで眠る子猫を愛でていた。
翌日。
電話帳で調べた動物病院に子猫を連れていき、診てもらった。健康そうな1ヵ月くらいのオス猫だと教えて頂き、ワクチンを打って帰宅。
トイレの世話からエサの与え方もしっかり病院で教えてもらったと母は笑っていた。
動物病院で診てもらうとき。
「猫ちゃんの名前は?」と聞かれ、とっさにでた名前。
「チャコです。」
えっ?チャ、チャコ?
私は母に「チャコなの?」いずれ怪訝そうに言うと、帰ってきた返事は、
「母さんが責任もって飼うからいいの!命名権は母さんにある!」。
ま、まぁそうだけどさぁ。
私は学校に行っている間もバイト中も子猫の名前を考えていた。
21時過ぎの田舎の在来線は空いている。
「あ、そうだ!」
バイト代を貯めて買ったウォークマンのヘッドフォン越しにも聞こえた自分の声。
「『おかか』にしよう!」
とっくに母が決めた子猫の名前は『チャコ』。
「おかか」という名前は言わずに飲み込んだ。
続く(の?)。
∗うめおかか∗
女性/54歳/東京都/会社員
2020-05-15 00:34