私の無くした物案件
本部長、秘書、お疲れ様です。
私の無くした物、あれ知りませんかですが、結婚6年目にして心を無くしました。私は網膜色素変性症と言う目の難病であり、中途失明をしました。最初は視野が狭くなり、足元に落としたボールペンすらすぐに見つけることもできませんでした。徐々に、視力も低下し、夜の歩行が困難になってきました。当時、介護福祉士として、介護施設で働いていましたが、夜勤が出来なくなり勤務先を変更。そして、退職。盲学校に入り、指圧師としての道を歩き始めたのでした。中途失明した時は、子どもも生まれて1年半でしたので、たくさん子どもと遊んであげることもできず、食べていくためにどうしても指圧師にならなければいけませんでした。勉強について行くのが必死でした。そんな盲学校1年目の夏休み、学校で夏期講習を受けていました。慣れない点字を読むことや、専門用語の意味が理解できず、こんなんで国家資格が受かるのか、受からなかった場合、一浪する体力なんてない。生活するお金もない。そんなことになったらどうしようと悩むばかりでした。そして、帰りの電車の中で、疲れていた私は死にたいという結論に達したのでした。首をつろうか、川に身を投げ出すか、車に引かれるか、どのようにして死ぬかだけを考えていたのです。そんな時、頭の中に子どもの声で「どうしてパパは起きないの」という子どもの声が聞こえた気がしたのです。はっと我に返った私は、死ぬことをやめて、指圧師の免許を取ることが出来たのでした。あのとき、子どもが棺桶で寝ている私の姿を見ていなかったら、私はここにいなかったでしょうね。無くした心を、子どもが取り戻してくれた私の思い出です。
ふわふわクッキー
男性/52歳/東京都/自営・自由業
2020-07-08 08:33