なくしもの案件
本部長、秘書、皆様、お疲れ様です。
私の忘れられないなくしもの、それは最初に身につけた時計です。
中学生になった時、時計を買ってあげると母に言われました。
私は新しいものより、母がよそ行き(死語ですね。すみません)の時に身に付けていた、金の華奢なクラシック風の腕時計が欲しいと言いました。母は躊躇するかと思いましたが、むしろ嬉しそうに『お婆ちゃんから貰ったものなんだけど、あんな古いもので良ければあなたに譲るわ。』と言ってくれました。
それまで何度か母に隠れて身につけて鏡に映したりして憧れていたので、とても嬉しかったのを覚えているのですが。
修学旅行に身に付けていった時、お風呂や寝起きの為に、つけたり外したりしたせいか、うっかり何処かでなくしたみたいで、慌ただしい集団生活で緊張しており、なんとなくしたことは帰ってから気がつきました。しばらく母に言えずにずーっと悩んでいました。それから打ち明けた記憶はなく、母は気づいていたのか、いなかったのかもわかりません。いまだに似た時計を探してる自分がいます。多分一生申し訳なく後ろめたく思うと思います。
所が、自分が母になり、中学生になった娘にも時計を買い与えましたが、既に現在高一の娘は三個も時計をなくしてます。買いかえる度、だんだん値段が下がる娘の時計。
そうか、娘のうっかりは私の遺伝子なんだな。
なんだか、最近は少し気が楽になりつつある私です。天国の母も、時計の事なんてすっかり忘れてるような気がします。
まりコロン
女性/59歳/東京都/派遣
2020-07-08 17:15