ヤギ専務案件

今の時期、スーパーの果物売り場を見ると必ず思い出してしまう記憶があります。

まだ子供だった頃。
ご近所さんが庭で採れたビワをおすそ分けしてくれました。
初めてビワを食べた私は世の中にこんなにおいしい果物があるんだ！と驚き、しばらくの間頭の中はビワでいっぱいでした。

そしてある日の学校帰りのこと。
ご近所さんの家の塀越しにビワが沢山実っているのが見え、気付いた時には私は塀によじ登り、片手で塀に掴まりながら無我夢中でもぎ取って食べていました。
「ビワうまい」その感情しかありませんでした。

あんな真似をしたのは後にも先にもあれっきりで怒られることもありませんでしたが、その分不安が広がって、こっそり親が菓子折を持って謝りに行ったのかなとか、ご近所さんは見て見ぬ振りをしてくれたのかなとか色々考えてしまいます。

ビワを見る度恥ずかしさと懺悔の気持ちでいっぱいになり、もうずっと食べられていません。
ヤギ専務、この記憶、どうか消し去ってください。

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