社員掲示板

バックバーの、ある物語。

私はバーで働いています。
バーの酒棚には、それぞれの店の個性があるのです。
私の店の酒棚にも、一つの物語りがあります。

私の店が開店した当初に、
よく二人で来店していた御客様が、
最後の一杯に、決まって飲む酒がありました。

私は、随分と月日が過ぎてから、
その女性が、お亡くなりになったと、人づてに聞いたのです。
連れの男性は、今では、数年に一度、来店する程度ですが、
その酒を飲む事は、ありませんでした。

しかし、彼にとっては、
その酒が私の店に在るのは、
疑う余地の無い当然の事なのです。

いつか彼が、その酒を飲みたいと想った時に、
提供出来る日が来る事を私は知っていました。


ある雨の日。
バーの扉が開いた店先に、
その男性が立っていました。

男性がオーダーしたのは、
もう20年も昔の懐かしい酒でした。

ラヂオから流れるデュークエリントンの調べに乗って、
外の雨音が彼に語りかけてくるのは、
どんな声だったのでしょう。

その男性は、ゆっくりと一杯の酒を味わい、
笑顔で帰られました。

bar亭主

男性/60歳/東京都/自営・自由業
2020-07-20 02:36

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おはようございます

やっぱりバーは様々な人間ドラマがありそうですね!他にも色々なお話聞きたいぐらいです。
ちなみに差し障りなければ何というお酒だったのですか?

まほまほぱぱ

男性/37歳/神奈川県/自営・自由業
2020-07-20 07:20

書き込みありがとうございます。

お酒は、ブシュミルズの十年モルトです。
掲示板にお酒の銘柄を書かなかったのは、
最近のスカロケさんの強力なスポンサーさんがキリンさだからです。
スポンサーさんに忖度してみました。

夜の酒場の四方山話なので色々な事がありますが、
『事実は小説より奇なり』といえない事も多いですね。

bar亭主

男性/60歳/東京都/自営・自由業
2020-07-20 11:19