ちょっとした小話
いつも行く東十条のお店で
カウンターの片隅に一人静かに座る怪しいオジさんが気になった
確か前回も同じ様に同じ場所で酒を飲み、女将さんをじっと見つめていた
そして午後8時半を過ぎると「終電の時間だから」と席を立った
これも前回と同じだったはずだ
何となく興味がわき、パートのチエコさんに
「この時間の終電って早いよね」と聞いた
すると「彼は長野の歯医者さんで、東京駅発の新幹線の終電が10時頃なのよ」
という答えが返って来た
「へぇー、長野からわざわざ通って来るんだ」
「彼はね、学生時代からママに憧れていて、それで通ってきてるのよ・・・」
月に数回、彼は診療終了後に長野駅から新幹線に乗る
女将さんの顔を見つめ、ちょっとだけのおしゃべりをするために
そしてまた、新幹線の終電に乗って帰って行く
学生時代に憧れを抱き、片想いに胸を熱くして30年・・・
その話を聞いてから、久々に遭遇した美しき純愛話に感動したボクは
「怪しいオジさんなんて思ってゴメン!」と
心の中でつぶやいたのは言うまでもありません
とようのドラ息子
男性/46歳/東京都/自営・自由業
2020-09-02 20:52