ありがとう
奥大井湖上駅の近くで私を拾ってくれたおじさん、ありがとうございます。
以前、静岡県の奥大井を旅していた時のことです。
当時私は休日は一人で旅に出ることがよくあったのですが、その日も大井川鉄道の奥地、奥大井湖上駅付近で写真を撮っていた時、知らない電話番号から電話が。
電話に出てみると、救急隊の方からで、聞くと私の母が都内の地下鉄駅で倒れたとのこと。
すぐに病院まで来てほしいとのことで、母が運ばれた病院に行くことにしましたが、そこは鉄道は一時間に一本程度しか通らず、バスに乗るにもバス停まで距離があるようなところでした。
最寄りのバス停に到着して次のバスを確認したのですが、なんと次のバスまで数時間…
私は母の一大事に誰もいない山奥で一人オロオロしていました。
すると山の上の方から一台の軽トラがやってきて、私が立っている前に止まりました。
すると中のおじさんが、私に「乗りな」と声をかけてくれたのです。
私があまりの突然の展開に驚いていると、そのおじさんは「ここらはバスはほとんど通らないから、近くの大きな駅まで送ってあげるよ」と続けてくれたのです。
私はこのおじさんが仏のように思え、便乗させていただくことにしました。
駅までの道中、そのおじさんは地元にお住まいの方とわかり、さらには近くの茶畑に寄って収穫が終わった茶の木から葉をすこし手折ってくれ、「いい匂いするだろ、この辺の名産だから覚えててね」等と軽く観光案内してもくれたのです。
駅に着くと、私はおじさんにお礼をしようと申し出たのですが、そのおじさんは「君がまた別の人に同じようなことをしてくれればそれでいいんだよ」とお礼を受け取らずに立ち去って行きました。
あれから私は車を運転して遠出するたびに、誰か道端で途方に暮れている人がいないか探しているのですが未だに恩返しできていません。
本当にあのときのおじさん、ありがとうございました。
狛江のピー助
男性/35歳/東京都/公務員
2021-03-09 18:00