ありがとうをあなたに ~1~
17才年上の叔母がいる。
勝ち気で声が大きくて、コロコロとよく笑う人。
ニックネームは『トコちゃん(仮名)』。
小さい頃、顔立ちがよく似ていると親類に言われるのが嫌だったな。
トコちゃんは、高校を卒業してすぐお見合いをしたらしい。
お相手は漁師のユーイチさん(仮名)。
漁師らしく日に焼けていてちょっとほりが深く、痩せているけどマッチョな感じ。
トコちゃんは一目惚れだったそうだ。
あれよあれよと話が進み、トコちゃんは20才になる前にお嫁さんになった。
ユーイチさんの家は海苔養殖を生業としていた。市場に出ない所謂『はね海苔』を束で貰えるので、子供の頃の我が家では海苔を買った記憶がない。
厚みがある海苔をストーブでサッと炙ってご飯を巻いて食べる。最高のご馳走だ。
母が父と別居してからも、母や私たち兄妹はトコちゃんや父方の親戚とは交流があった。
とかくトコちゃんとユーイチさんはいつも母や私たちを気にかけてくれた。
そんなトコちゃんと会わなくなったのは、私が高校を卒業してからだ。
両親が離婚し、我が家は皆バラバラに生活をし始めた。ある意味『解散』だ。
でも次兄は、子供ができてからトコちゃんちの近くにある海水浴場に子供たちを連れて行くことで再び交流をもっていたそうだ。
3.11。
あの日、トコちゃんはどうしていたのかな。
∗うめおかか∗
女性/54歳/東京都/会社員
2021-03-10 21:30