社員掲示板

全力ペダル案件(前編)

春休みのある晴れた日、僕は自転車で出掛けました。出掛けたと言っても最初は特に目的はありませんでした。

序章
僕は東京都足立区千住で生まれ育ちました。
第一章
高校2年の冬に千葉県東葛飾郡沼南町(しょうなんまち:現在の柏市の一部)に引っ越しました。でも、転校はせずに都立高校へ通い続けました。
第二章
高校の文化系のとある部活に同学年で別のクラスの中澤さん(仮名)という女子がいて、話下手な僕にも普通に話しかけてくれていました。
第三章
ある日、中澤さんが「日本史のノート貸して」と言ってきました。女子にノートを貸したことなどなかったので驚きましたが貸してあげました。なんだか嬉しくなり、ドキドキしました。
第四章
何度かノートを貸すようになり、ある日、普通にノートを返してもらって、家に帰ってノートを開くと、まだ使っていないページの真ん中の一行に「中澤さんの誕生日、2月○日」と書いてあり、それは最後のページまでずっと続いていました。
女子に誕生日プレゼントなど贈ったことなどなかった僕は驚き、ドキドキし、そして嬉しい気持ちになりました。
第五章
ノートの話をしたら中澤さんは笑顔で「もうすぐだからね。」と言いました。誕生日に何を贈ったらいいかわからなかったので直接聞いて、当時流行っていた「虹とスニーカーの頃のレコード」を贈りました。とても喜んでくれたのを見て、僕もすごく嬉しくなりました。
第六章
当時、世間知らずでいろいろなことがわかっていなかった僕は、男子と女子が一緒に映画を観たり遊園地に行ったりするためには、
「大好きです。僕と付き合ってください」と告白し、了承されなければならないものだと思っていました。
そして、今まで女子にモテることなどなかったけれど、頑張って真面目に生きていれば神様が見ていてくれて、いつかきっと自分に相応しい人と出会わせてくれるのだと思っていました。
そしてついに、それが叶えられる時が来たのだと思いました。
第七章
僕は生まれて初めてラブレターを書きました。手紙の最後に「もしダメならそれでもいいので、春休みの前までに返事をください。」と書いて、渡しました。
第八章
春休みまでの数日間、中澤さんは普段とあまり変わらないように見えましたが、返事はありませんでした。
(つづく)

ファーストオーシャン

男性/62歳/千葉県/会社員
2021-05-05 16:44

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