社員掲示板

大好きな街で生きていく(2)

フラれたのか。
3日経ち、呆然と思った。

既読はつかなかったが、今の私の立場で彼の友達にこんなことがあったと泣き付くのは違うと、私のプライドなのか、これ以上傷付きたくないという臆病なリトル私の声なのか、何の行動も起こさなかった。起こせなかった。

だけど、彼の寝巻きやお箸、インテリアショップで買ったどこの角度から見てもダサい象の置物は捨てられなかった。象の置物は彼がえらく気に入って、私の家には絶対に置きたくないと言った物だったのに。

しかし失恋をしたからといって、生活は営まなければならない。何より私は社会の歯車なのだ。
『どうしてこうなったのか』という思いはどんなに忙しくても、頭の片隅ではなく常にセンターを陣取っていた。(これは比喩じゃなくて、本当に歯を食いしばって仕事し続けた。多分、あの時私に噛み切れないものはなかったと思う)



もう、2人で散々楽しんだ街には行けなかった。怖かった。

『ここ1番でしか着ないんだ』と言って初めて会った時に着てた白Tを着てる姿を見たら。

たくさんお世話になったお店で『これ美味しいんだよ』と言いながら私の好きなサーモンアボカドを頼んでいたら。

女の子に腕を絡ませられていたら。



性根ウルトラスーパーポジティブシンキングの私が気付いたら毎晩膝を抱えて泣いていた。もうお金を必要最低限稼ぐこと以外で新しく人と出会うのは絶対に辞めようと思った。こんな思い一生したくない。誰もいなくならないで欲しい。

こういう時、人はお酒に逃げるのかもしれないが、酔った勢いで彼の消息を追って、知りたくない現実を知るのを恐れ、本当に1滴も飲むことが出来なくなった。

乾杯ハイボール

女性/31歳/大阪府/会社員
2021-07-08 22:59

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