大好きな街で生きていく(3)
そんな時だった。
『最近、【付けた直後でもおにぎりが握れます!】っていう売り文句のちょっとお高いハンドクリーム買ってんけど、どのタイミングで塗ったらいいか毎回悩んでまうねん』というラインが来た。
もう1つの私の大好きな街のマスターからだった。
何も美味しくなかった。
公園で読む本も全く内容が頭に入らなかった。
散々お世話になったバンドの歌詞が全て色褪せた偽物に見えた。
ただマスターからのラインは何の報告なんだよ、と思えた。
気付いたら『そのハンドクリームは塩味なんですか?』と送っていた。3週間後、私は引っ越しをし、思い出が詰まった部屋を後にした。
乾杯ハイボール
女性/31歳/大阪府/会社員
2021-07-08 23:02