思い出の一行案件。
本部長、秘書、社員の皆様、お疲れ様です。
本日の案件、私の『思い出の一行』は、大先輩の番組ディレクターからもらったお手紙の「日常は"演出"だ!」です。
9年ほど前、テレビ番組のADからディレクターになる第一歩として、初めて自分で取材した企画の編集を連日徹夜で行なっていました。
昼間はADとして番組のリサーチや収録準備、夜になると会社の編集室にこもり、朝方コロコロイスを2つ並べて縮こまって仮眠を取る日々が続いていました。
そんなある日、私が深夜に編集をしていると、会社の大先輩のMさんが、ロケを終えて一人で会社に戻って来られました。
Mさんは当時すでに50歳を超えていながら、生涯現役を宣言し、バリバリロケや編集を行っていて、とてもキラキラした素敵な大ベテラン。
編集室を覗き込んだMさんは、私の姿を見つけると「おぉ、頑張ってるな。」と声をかけてくれました。
しかし、余裕のない私は「はい…」と覇気のない返事をするので精一杯。
Mさんは「がんばれよ」と優しく微笑むと、すぐに編集室を去り、ロケの後片付けを済ませるとすぐに会社を出て行きました。
その後、数時間経ってから、私が自分のデスクに戻ると、そこにはMさんからの置き手紙が。
内容をおおまかにまとめると、
「初めての演出。ディレクターという肩書きや責任に緊張しているだろう。
でも、君は毎日人と話すだろう。服を選ぶだろう。お化粧だってするだろう。
それらはすべて、何をどう人に見せたいかを演出しているに過ぎない。
日常は演出だ!君がみたものを、人にどう見せたいか。そのためのベストな道を見つけよう。
がんばれ。」というものでした。
目からうろこが落ちたような気分でした。
私が素敵だと思った取材対象を、どんなふうに人に感じて欲しいか。
迷子になっていた私の肩をたたき、出口の光を指差してくれたようなお手紙でした。
今はテレビ番組制作を離れてしまいましたが、このお手紙は今でも大切にしまってあります。
何をしたいか、どうしたいかがわからなくなった時、いつもこの「日常は演出だ!」の一行を思い出します。
ビスコたべる子
女性/37歳/東京都/自営・自由業
2022-03-08 18:46