ほろ酔い日記
『今夜は満月だ、大きなまんまる、部屋から見える?』
『三日月だよ、綺麗な形をしてる』
彼はそう言った。彼の月観察のおかげで季節よりももっと細かい時間の流れを感じる事ができる。
小学4年生の時、担任の先生はそれはもう厳しくて有名だった。苦手な給食のおかずがあれば昼休みになるまで時間を割いて食べさせられたし、手首に巻いたカラフルなヘアゴムは結ぶ髪もないのに、と家に置いてくる事を声高らかに命じた。子のおふざけが過ぎればきちんと正座をさせて反省をさせ、正しいとは何かを説いてくれた。
子供はうんと狭い義務教育の中で生きている。先生がそうといえばそうなのだ、何故なら先生なのだから。
今になって思う、道徳の授業は本当に必要だったのか?
『大親友が犯罪を犯し、あなたの元に尋ねてきた。あなたは匿うか、警察に突き出すのか』
答えがないのが道徳なはずなのに、クラスの同級生はみな後者だと言った。満場一致だった。何も疑わずに、それが正しいと言う。教育とは怖いものである。
彼の言う『月が綺麗だよ』を当時の私に言ったとしたならば『月は毎日綺麗だよ』『今日は晴れてるから綺麗に見えるね』と答えると思う。なんてへそ曲がりなんだろう。なんて可愛くないんだろう。
乾杯ハイボール
女性/31歳/大阪府/会社員
2022-04-20 00:14