本日の案件
自分も還暦を越え、おりに触れて思い出すのは、ホテル勤務だった頃よくお見かけした、俳優・池部良さんのお姿です。
池部さんは言うまでもなく、日本映画の黄金期を支えた代表的な二枚目のスターです。ですがよく独りで来店された際には、隠しきれないオーラを放ちながら、いつも私たちホールスタッフにもにこやかに接してくれました。
混雑時に入口で待たれていた時に、後ろに並ばれていた老齢の女性と娘さんに、「お先にどうぞ」と順番を譲られた事もありました。あんなにスマートにさりげなくレディファーストを実践できる日本人男性に、当時初めて接しました。
他のお客様に話し掛けられても丁寧に応じられ、ある時担当のキャプテンが「お食事中恐縮ですが、私の母が大ファンなのです。サインを頂戴できますか?」と申し出たところ笑顔で色紙を書かれ、「でも次からは、せめて姉がファンと言ってよ」とジョークを返されました。周囲が温かい笑いに包まれ、紳士とは何と洒脱な応対をするのだろうと、20代前半の私は感心したのを、今でもはっきりと覚えています。
そんな私も当時の池部さんに近い年齢になりました。周りに向けるやさしい笑顔や柔らかな話しぶり、美しい姿勢などに少しでも近づけることを、秘かな目標として暮らしています。おそらくこの年代の日本人男性にとって最も苦手な事で、とても高いハードルですが。
ロボタン勲章のボッチ
男性/65歳/東京都/会社員
2022-12-08 11:31