ごめんな祭案件
私の祖父母の玄関には、季節の花や生き物を飾る文化がありました。
お盆あたりから学校が始まるまでの約2週間は祖父母の家に泊まりに行くのが我が家の恒例で、じいじとばあばに会える!それが夏休み1番の楽しみ行事でした。
自分の背より少し高い玄関棚にガラスの虫籠が。
祖父に抱きかかえられ見せてもらったのは人生初の鈴虫でした。
年少だった私は、羽を震わせとても綺麗な音を出す鈴虫に心を奪われ、音を出すごとにリビングから玄関に走って見に行ってました。
わたしは基本的に虫は苦手では無かったのですが、唯一大嫌いだったのは蚊です。
祖父母の田舎の蚊は何故か普通の蚊より大きく、刺されると、痛いし痒かくて辛かったです。
寝る前に鈴虫さん達におやすみの挨拶をし終わった時に「寝てる時に鈴虫さんたち、蚊に刺されちゃ、可愛そう。」と思った私は、虫除けスプレーを噴霧しまくりました。ピュアな気持ちで。
「これで、きっと大丈夫。鈴虫さんたちも痒くならない。」そう思い眠りにつきました。
翌朝、起きて玄関に一目散に向かうとガラスの虫籠が撤去されていました。
祖父に「鈴虫さんたちは?」と聞くと
「天国にな、お出掛けしたんやでー。」と優しく言われました。
そう、鈴虫は全滅してしまいました。
寂しくて涙が止まらずに泣きじゃくる私に祖父は、「また来年鈴虫さん来るから。」となだめてくれました。
翌年の夏、鈴虫を設置してくる業者の方が来てくれる日に合わせて帰省しました。
業者の方が設置完了後に、「いつものことになりますが、蚊取り線香、虫寄せスプレー等殺虫剤の使用はしないでくださいね〜。」と言いながら帰っていきました。
そこで、はじめて知ったのです。
あ、鈴虫さんに虫除けダメと。
そこから、罪の意識や不安や恐怖に苛まれながら悶々と過ごしましたが1時間も持たずに、咽び泣きながら祖父に謝りました。
和室で正座させられ、結構しっかりめに怒られました。
もう2度としません!と約束もしました。
でも何故か、祖母や母や兄には内緒にしててくれました。
おばあちゃん、お母さん、お兄ちゃん
鈴虫変死事件の犯人は私です。
ごめんなさい。
たまさか
女性/36歳/東京都/会社員
2023-08-31 15:18