主婦の叫び
居酒屋なんてやっているとそこそこの頻度で“主婦の叫び”に触れる機会があります。
自分が勝手にこさえた花壇の世話を奥さんに任せる、やりっぱなしの旦那に対する叫び。
嫁に行く気も無いという娘さんに対する叫び。
30年もひとつ屋根の下で暮らしているのに未だに食事にケチつける姑に対する叫び。
頑固で言うこと聞かない舅に対する叫び。
「生まれ変わったとしたらまた今の旦那さんと一緒になる?」
「なるわけないでしょ、冗談じゃないわよ!」
「ふ〜ん、そっか」
「鴻、あんたね、自分の奥さんに聞いてごらん。来世でも俺と結婚してくれるか?って」
「いや、それ聞かん方がいいと思うな」
「でしょ?」
いやいやいや、家庭の中では間違っても暴発させられぬ胸の奥底に溜め込んだ鬱憤。
中にはここに書けないような言葉を落としていく奥方もいらっしゃいますが。
誰が何を喋ったかなんて、口が裂けても私からは言えません。
お客の秘密は守ってあげねば。
対して男性のお客さんとなると……
“夫の叫び”を発する御仁は圧倒的に少ないようです。
だいたい、酒と一緒に飲み下していかれる。
「今更言っても始まらねぇ」と諦めているようでもあります。
言えた義理じゃねぇし……と自覚している節もありそうです。
酒場で垣間見られる人間模様は、時にオモロい。
鴻の親父(おおとりのおやじ)
男性/66歳/埼玉県/居酒屋やってます
2023-10-10 14:29