怪談……
昨年末から今年の年始の時期、私は地元の大きな病院で入院生活を送っていた。
因みにその大学病院の創始者は細菌研究で著名な先生で、明治時代に日本でペストが蔓延することを防いだことでも知られている。
今の千円札の先生と言った方が誰にでも判りやすいかもしれない。
入院中、特に術後の回復期になると不謹慎ながら暇を持て余す。
リハビリで廊下をせっせと歩いたり、普段あまり読めない本を読んだりしても、やっぱり時間を潰しきれないのだ。
勢い、一日3回の体温、血糖値、血圧、血中酸素の測定でベッドに来てくれる看護師さんと無駄話をすることになる。
看護師さんも回復期の入院患者は退屈してると知っているためか、愛想良く無駄話に付き合ってくれるのが有り難い。
中には極めてノリの良い看護師さんもいて、そうなると僅か二分か三分ほどの測定中にも話が弾む。
「ちょっと聞いてイイ?」
「はい?」
「こういう大きな病院って、やっぱり夜中に出るの?」
「あぁ、ふふふ、出ますよ!」
看護師さん、急にわざとらしく私を睨む。
「へぇ〜やっぱり出るもんなんだ、で、どの辺によく出るとかあるの?」
「この病院はね、特に男子トイレでよく出るんですよ」
「は?やめてくれよ、冗談だろ!?!?」
「ホントですよ」
看護師さん、今度は楽しげに笑顔。
「やめろよ、俺、術後で夜中に二度も三度もトイレ行くんだぜ、知ってるだろ」
「あら、まだお会いできてなかったんですか?」
いや、会いたくないし。
でも一回くらい会ってみてもイイかも……
いやいや、やっぱり会わなくていい。
鴻の親父(おおとりのおやじ)
男性/66歳/埼玉県/居酒屋やってます
2025-11-04 23:43

