8度
お疲れ様です。
雪山での思い出です。
その冬の1月、大雪に見舞われた東京の街は、一面雪化粧だった。
2018年1月25日、
僕はスキップをしながら、電車とバスを乗り継いで、埼玉県にある両神山(りょうかみさん)という山に向かった。
登山口に着き、歩き始める。寒い。
快晴ではあるが、風は強く、予想以上に雪が深い。ザックにつけた温度計を見ると8度だった。寒く感じるけど、意外と暖かいんだな。
中腹までたどり着いたとき、僕は絶望していた。あまりの大雪に、かなり時間がかかってしまった。
『まだ登るんですか?』
消防の山岳隊の人だった。
誰か後ろからついてきているのは気づいていた。
登山届を見て、心配して様子を見に来たのかもしれない。黙って登れば良かったかな。
『登りますよ』
意地で答えたものの、迷っていた。
チョコレートをかじりながら、考える。
このまま登頂しても、下山した頃にはバスは無い。遭難のリスクもある。寒い。
『本当に登るんですか』
『やっぱり……やめておこうと思います』
温度計を見ると、8度だった。
一緒に下山して、バス停に着くと、
次のバスまで時間があるから、駅まで送ると言ってくれて、その優しさに胸がギュッとなった。
2速発進のジムニーの中、話をしながら、ふと温度計を見ると8度だった。
夜、部屋の中で、その日のことを思い返していた。
そういえば、あの温度計、雪山でずっと8度だと、ほざいていたな。
ザックについたままの温度計を見ると、8度だった。
夏に、また両神山に行こう。
そのときも、お前はまた8度って言うんだろ?
ポンコツにそう言ってやった。
北岳に来ただけ
男性/38歳/東京都/会社員
2026-01-20 12:34

