なにかいいこと パート2
時として、永遠は一瞬のようで、一瞬は永遠に変わる。
改札を抜けると、柔らかい午後の日射しが、ガラスの天井から射し込んでいた。
待ち合わせの人、行き交う人で駅は活気にあふれている。
僕は、足早に人々の間を縫うように歩く。
特に、目的地があるわけでもなく、時間に急いているわけでもなかったけれど。
ロータリーに下りるエスカレーターに乗る。
いつだってうつ向いて、心を閉ざしている。
だから、その人とすれ違うまで、僕はその人の存在に気付かなかった。
エスカレーターを昇ってきたその人の長い髪と、揺れる香りに僕は思わず視線を上げて振り返る。
彼女も振り返っていて、その視線は、真っ直ぐ僕を見つめていた。
エスカレーターを降りても僕は歩き出せずにいた。
エスカレーターを降りる彼女を、立ちすくんで見つめていた。
次の瞬間、彼女が振り返る。
彼女も僕のほうを見つめて立ちすくんでいる。
僕らの間に言葉はなかったけれど、きっと心で話していた。
僕が、そっちへ行くよ。
いや、私が下りていくわ。
二人は引き合うように同時にエスカレーターに乗った。彼女は今度は下り、僕は、昇り...。
二人ともずっと見つめ合ったまま、ちょっと照れて笑った。
すれ違う瞬間、僕たちは、少し身を乗り出して、キスをした。
エスカレーターを降りて、僕はすぐに下りのエスカレーターに乗り換える。
振り返って立ちすくんでいる彼女に向かって、エスカレーターが下っていく。
...そんないいこと、ないかなぁ。。。
エリーマイラヴ
男性/45歳/東京都/総帥(so sweet)
2015-11-08 13:03