なにかいいこと パート4
毎朝、ガラス扉を磨くのが僕の日課だ。
まったく...人はどうして、取っ手があるのに、どうしてガラス部分を押して開けるのだろう...。
そんなことを考えながら磨いたり。
気分のいい時は、鼻歌なんかも出てきたり。
ガラス扉を拭き終えたら、車たちを磨く。
この時間になると、毎朝通りかかるおじいさんが、こちらをじーっと見て、何も言わずに去っていくようになった。
いつものことだから、放っておく。
ある朝のこと。おじいさんが、僕に声をかけてきた。
開口一番、「そんな拭き方じゃダメだ」と言った。
僕が、ムスッとして磨く手を止めないでいると、おじいさんが近付いてきた。
「しっかりと、もっと腰を入れて!上!下!右!左!」
時々アクションを入れながら熱く僕に語りかけた。
僕は、初めのうちは煩わしかったのだが、おじいさんが言う通り、しっかりと磨いてみた。
すると、車はピカピカになった。
次の日も、その次の日もおじいさんは僕に車やガラス扉の磨きかたをアドバイスしてきた。「膝をしっかり使って!そこでて手を回す!!」
僕達は、いつしか師弟のような感じになっていて、毎朝の時間で心を通わせるようになった。
それから数ヵ月後のこと。
おじいさんが言った。
「お前さんに教えることはもうない」
その一言を残しておじいさんは僕の前から姿を消した。
。。。つづく
エリーマイラヴ
男性/45歳/東京都/総帥(so sweet)
2015-11-18 21:24