映画『禁じられた歌声』を鑑賞
今年度フランスセザール賞で7部門を独占しアカデミー賞フランス代表に選出された作品
マリ北部の街で、若い事実婚カップルが石打ちにより処刑された実際の事件をベースに
本作も世界遺産でもあるマリ共和国のティンブクトゥで製作され、イスラム過激派に占拠された街の実状を主人公の少女の家族を中心に描いています。
突如現れたイスラム過激派に支配された街はアッラーの御告げという名目で兵士達が作る法によって音楽やサッカーが違法となり背いた者には容赦のない刑罰が行われ街は暗い影に包まれだす、そして、街の外れに住む一家は些細な出来事からその幸せな生活が危機に陥る。
過度の流血や暴力は頻繁には出てこない、しかし、坦々と日常に起こる理不尽を写し出す。人間が本来持つ自由を奪う暴力に対し人々が行う静かなる抵抗がより現実感を感じさせる。
過激派の兵士はアッラーの名を語り規則や横暴を働くが完全な悪という描きかたではない、村の長老にコーランに記されていることで問答を受けるがまともに答えられない。教育を受けていないため正しい知識が無いためです。そして、自分達が定めた規則に違反している村人に対しての葛藤を抱く場面も。
これらのシーンを観ていると欧米が善悪を簡単に分けるほど事は単純ではない事を訴えている感じを受けます。
ティンブクトゥに流入した過激派がリビアからやってきたことにどことなく気付きます。欧米の介入によりリビアは混乱状態に陥り、結果的にイスラム過激派が各地に飛び散り横暴を働く負の連鎖をもたらした。「テロとの戦い」「民主主義の実現」という大義名分だけでは見えない現状も見えてきます
ラストの砂漠を駆ける少女の瞳に胸が締め付けられる思いでした。
ムーンライズキングダム
男性/47歳/千葉県/Come live with me ~共に生きよう~
2015-12-31 19:54