映画『サウルの息子』を鑑賞
昨日鑑賞した作品ですが書き込みが反映されなかったので再度書き込みました。
舞台はアウシュビッツ収容所、主人公のサウルは※ゾンダーコマンドとして収容所内で働く。
日々、多くの同胞を地獄に送る手助けを行い、血だらけの床を掃除し、多数の死体を火葬し、その灰を川に捨てる。
彼の表情は感情を失っていた。
いずれ訪れる自らの運命に対する恐怖が人間性を壊していったのだろう。
しかし、ある少年の遺体が彼の失われた「人間」を呼び覚ます。
そして、彼は決意をする、
正しく弔おうと。
通常のホロコーストを扱った作品のような残酷なシーンはあえてみせない、ピントをぼかしたり、聴覚で感じさせることでより暗い恐怖を印象を感じました。そして、映像もサウルの顔やサウルの見る風景をメインに編集してあり、サウルの置かれている状況に深く入り込める。
周囲の人々を巻き込みそして危険にさらすその行動は彼が人間であることを取り戻す静かな戦いと感じ、不変の真理である生(もしくは証明)と死、(というよりはどのように、どのような死とでもいうのか)
そして倫理や場の状況が混ざりあうことで実に濃密に創られていました。
そのなかで同じ作業を行っている仲間内で秘密裏で計画される企みがあり、その動きと彼の行動の絡みを描くことにより緊迫した空気を増幅させます。
彼の抱いたもの、取り戻したものが起こす結末があまりにも鑑賞者の胸を痛めつける。
喪失の先に表情を取り戻したが、引き換えに失なったのは・・・
※ゾンダーコマンド・・・ナチス側が選抜して数ヶ月の延命と引き換えにユダヤ人の死体処理を行う部隊。
ムーンライズキングダム
男性/46歳/千葉県/Come live with me ~共に生きよう~
2016-02-01 20:15