案件

私は母の余命宣告を受けて実家に戻って来ました。１年弱の闘病生活が終わって残されたのは、病人より手のかかる父でした。

洗濯もゴミ出しもしてくれてます。が、それ以外、特に食事に関しては一切ダメです。専業主婦だった母にうん十年と給仕され続けた父にとって、夕食は出てくるのが当たり前のものなんです。
泣いて懇願しても胸ぐらつかんで怒鳴っても、いまだそこは変わりません。私がどんなに疲れていてもどんなに体調が悪くても、コンコンと部屋をノックし「晩ご飯はどうするんだ？」と。その言葉はどんな呪文より私にダメージを与えます。

私にとって父は、重たい重たい足枷です。

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