イノセントワールド
お疲れさまです。
最近は純愛モノと帯がつけば『不治の病』ばっかりですね。
僕の敬愛する押井カントクは「演出家として観客を泣かせることが一番簡単」と以前語っていました。
それが一部の日本映画では現状なんでしょう。
本気でモノを作っている50男が乗れるわけがない。映画はウソでいっこうにかまいません。ただし、騙すなら上手に騙してほしいだけです。
十数年前、その押井カントクの映画で、
体も脳ミソも捨てて、意識だけの存在となり、ネットのどこかでデータとして生きることを選んだ女性と、ある事件を捜査しながら彼女の痕跡を探し続ける男(刑事)の話がありました。
刑事がピンチになった時、アンドロイドのデバイスに“ダウンロード”された彼女が現れ、一緒に事件を解決。しかし彼女はこの世界に留まってはくれません。
「あなたがネットにアクセスするとき、いつも私はそばにいる」と言い残して、再びネットの海に消えてしまいます。
近未来で脳の中にスマホが入っているような『電脳』の時代。脳ミソは常時接続。
彼女はデータでありプログラムなので、どこにいるかわからないけど、世界中どこにでもいるともいえる。彼女の一部は、本当に彼に寄り添っているのかもしれない。
見つめ合うことも、触れあうことも、笑顔を交わすこともない恋愛。それでも彼は彼女の存在をどこかで感じながら生き続ける。
。。。とそんな話。
これは究極の純愛だなと僕は思いました。
リアルなこの世界の恋愛で、同じ場所、同じ時間を生きているとしても、目に見えないもの、手の届かない『場所』を、信じられないような関係は、実はスレ違いで本当は出会ってもいないのかもしれない。
たとえば犬と人は会話ができません。
人と家畜の主従関係という厳然たる事実の中で、何かを共有して、何かを勘違いしながら、何かを信じて生きてきました。肉体は失われても彼女は今でも僕のそばにいます。僕の胸にはポッカリと穴が空いていますが、何かで埋めたいとも思わないですね。その他、僕にはあちこち、いろんな穴が空いていて、痴呆になれば一つずつ消えていくでしょうけど、モモちの穴は最後まで空いたままでいてほしい。
RADWIMPSの『スパークル』は僕にとってそんな曲です。
コーギモモ
男性/58歳/神奈川県/飲食業
2016-08-30 01:07