映画『ヒトラーの忘れもの』を観賞
今年最後の作品はデンマークの歴史に埋もれた史実をベースに製作された物語です。
1945年5月、デンマークはナチスドイツの5年に及ぶ占領から解放されます。しかし、海岸線には連合国軍の上陸を防ぐために埋設された200万もの地雷が残されました。
(大西洋の壁を参照)
作品はこの地雷撤去に駆り出された少年兵とデンマーク軍軍曹の心の変化と交流を描きます。
地雷撤去は全て手作業で、少しでも手元が狂えば一瞬にして命を奪うため緊迫感が凄いです。
常につきまとう死の恐怖、死んでいく仲間、劣悪な環境・・・、少年兵達は生きて国に帰ることを支えに砂浜に這いつくばり、手で砂をかき分け、地雷を除去していく。
監督している軍曹も当初はナチスに対する憎悪から少年達に情け容赦がありませんが少しずつ心に変化が起こり、光が見えかけますが物語はそこからも波乱含み。
(作品の舞台となっている海岸は美しくその光景との対比がより物語をズシッとさせます、が実はこの海岸は実際に地雷が埋められていました)
戦争は双方に深い傷を残します、憎しみは憎しみを呼び、光は遠ざかります。
地雷撤去の根底には「たとえ少年でもナチスの所業の後始末をさせるのは当然」という思いがあります、軍曹はこの正論じみた不条理に疑問を抱き戦争によって失われた人間の心を取り戻していきます
揺れ動きながらも徐々に・・・。
作品から人はやり直すこと、変わることができる、ということが感じられました。
作品はデンマークとドイツの合作、過去の歴史を乗り越え互いの暗い過去に向き合う人々の成熟性が羨ましく感じられます、アジアもいつかこうなればと願わずにはいられません。
補足
デンマークに残されたドイツ軍の捕虜の多くはヒトラーが戦争終盤に創設した市民軍でほとんどは老人か子供で編成。
地雷撤去は1945年5月~10月まで続き約2600人がこの強制労働に駆り出されそのうち半数が死亡、または重傷を負いこの期間で140万2000個が処理されました。
デンマークの地雷除去は2012年に完了とされるも翌年に未処理の地雷が発見、戦後70年を越えても戦争の傷は影を落としています。
そして、世界64ヵ国で約1億1000万もの地雷が埋められています。
ムーンライズキングダム
男性/46歳/千葉県/Come live with me ~共に生きよう~
2016-12-31 22:11