未来か。
僕が子供の頃、大好きな八百屋のおっちゃんがいました。
昔ながらの八百屋。
歩道にはみ出すくらい色んな野菜が並んでいて、天井からは釣り銭のザルがゴムヒモで ぶら下がってて、モヤシは水に浸かったまま計り売りだし、店の端っこでは若旦那(おっちゃんの息子)が里芋洗ってて、店はどことなくフルーツとヌカ漬けのまざった匂いがして、おっちゃんは八百屋らしいダミ声で人だかりの主婦たちに軽口やダジャレをいいなから、子供には『はいよ、お釣り300万円!』とかいう(笑)
母に頼まれて僕が買い物に行くと、バナナやらミカンやらオマケをくれて、うちの母が他所様から食べ物もらうのが極端にキライだったことも知ってて「母ちゃんには黙ってな(笑) 家帰る前に食っちまえ!」とか言って。
そんなおっちゃんが、ある日を境に店先から消えた。
母に聞いたら『脳ミソの病気』で倒れたらしい。
いくら子供でも脳ミソの病気はたいへんなことくらいわかる。たぶん、おっちゃんはこのままシヌだろう、と、僕は勝手に早合点して恐くなりました。
しかし、数カ月後、おっちゃん復活(笑)
もう立って歩くことはできないし、片手も動かなくなってましたが、店の隅っこでダンボールに入った茄子を取り出しては、3本づつラップしてました。
僕の顔を見ると、チョイチョイと手招きをするので、恐る恐る近付くと、ニヤっと笑ってアメをくれました。たぶん口もうまく動かなかったのかな。終始、無言でしたけどね(^◇^)
僕は若旦那もいるんだし、仕事しなくてもいいのに、と思いましたが、おっちゃんはいつも店にいました。ある日は人参を3本づつ袋につめて、ある日は胡瓜、ある日は1/4カットの白菜。
おっちゃんがどんな気持ちだったかはわかりません。
僕は実のところ、自分の未来をさほど真剣に考えていません。
でも、ひとつだけ叶えたい未来の夢。
それは【生涯現役】ですね。
コーギモモ
男性/57歳/神奈川県/飲食業
2017-03-09 01:34