エリーのハードボイルド日記 其の肆拾参

人生にはスパイスが必要だ。

スパイスという刺激によって当たり前の素晴らしさを改めて知る。
当たり前とは、自分の身の丈に合った、自分の好きで自分が埋もれている世界のことだ。
人間は自分の好きな場所にしか長くは居られないもの。
今居る場所が嫌いな人は、自分の好きな場所を探しているパイオニアか、自分の好きな場所であることを気付いていない人だ。俺の持論だ。

当たり前のありがたさをいつしか忘れてしまい、当たり前になってしまうことは、愚かで悲しいことである。
失って初めて大切さを知る。
それがいかに愚かなことか、俺は身をもって知っている。

非日常の体験をすべきだ。無理なら想像すべきだ。
もしくは、ルーティングの中に新しいものを見出だすことだ。
ルーティングだと思い込んではいけない。
毎日がスペシャルだ。
その点、俺は毎日新しい自分に生まれ変わり、新しい人生を生きている。
想像力・妄想力も手伝って、今を生きている。
男らしい生き方だろ？明日はない的な。

それにしてもやけに今日はヤツが荒れている。。。
俺には分かる。電気の消しかた、歩きかた、冷蔵庫の閉めかた、水の出しかた…それら全てから感じとる。
張り詰めたピリリとした空気。
…おっと。ヤツが来た。ちょっと待ってろ。

…え？このペットボトルですか？
…いえ。僕が飲んだものではありません。
…先ほどあなたがムシャムシャラベルをむいてましたが…
…え？捨てるのか捨てないのか？！
…いや、あなた次第ですが…
…え？洗濯機の予約をしたら？…既に洗濯物で満杯？
…あぁ。先ほどかごの中の洗濯物を入れておきましたよ。
…え？冷蔵庫になぜ缶詰めを入れたか？
…いや、あなたが先ほど意気揚々と入れてましたよ…
…え？トイレ入ったら流せ？
…いや、僕は入っておりませんで…さっきあなたが入ったような…
…え？トイレットペーパー？
…いや、僕は朝以来使っておりませんで…
…え？何でもかんでも言い訳するな？
…え？でも……え？でもって言うな？
…はぁ。何かすいません。
…え？何かとは何か？
…いえ。特に文句などありません。
…はぁ…いえ、はい！はい！すみません！

…ふぅ…スパイス効いてるなぁ…。

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