案件
彼女との出逢ったのは、高円寺のとあるバーでの事。
映画好きのウエイターくんがいるその店で、
その日見た試写会の話をしていた時に彼女が現れました。
何人かの取り巻きに囲まれて、騒がしい一団です。
奥のソファテーブルに陣取り、ワイワイガヤガヤ。
騒がしいのは、あまり好きじゃない。
私はムスっとした感じで飲んでました。
(彼女の方は「暗いやつだな~」思ったそうです)
そろそろ終電も無くなるころ。
一団も一人減り、二人減り、やがて彼女だけがテーブルに
ポツンと取り残されていました。
店がはねる時間になり、最後に残っていたのは私と彼女だけでした。
会計しようとした彼女が、バッグを開けた際に、
何かに気がついた様にソワソワし始めました。
どうやら自宅の鍵が無いらしく、ウエイターくんと探しています。
ただどうしても見つからない。
彼女は「どうしよう、ウチに入れない」と半べそ状態。
「なんだ、結構かわいいとこあるじゃん」と思いつつ、
ウエイターくんに質問します。
「ねえ、トイレは探したの?」
「ええ、探したんだけど無いんですよね」
「ふーん」
私は立ちあがり、トイレの方へ向かいました。
なぜか私はその時、鍵がトイレにある気がしたんです。
扉を開けると男女共用の小さな自然石を敷いたトイレがあります。
そのまま奥から手前まで、ゆっくり視線を動かします。
・・・?!
自然石を止める為の木製の仕切りとドアの隙間。
そこに何かが落ちていました。
取りあげてみると銀の猫のキーホルダーが付いた鍵。
「ねえ、これじゃない」
そういって振り向いた時。
すぐ後ろに彼女がいました。
彼女はタロット占い師で、当日がデビューだった様です。
うれしさと緊張からの解放感で飲み過ぎてしまい、
この様な状況になったとの事。
この出来事がきっかけになって顔見知りになりました。
話をすると恐ろしく好みや行動がシンクロしている事が判明。
少し天然さんの彼女が、他の人と私を間違って電話してきた事を
きっかけに付き合う様になり、あの鍵を私が持つようになりました。
そして。
二人の分身も来年は小学生。
今思い出してみても、出逢いはお互い最悪な印象だったなあと
笑い合ってます。
STAYGOLD
男性/58歳/東京都/ゲームの企画屋さん
2017-07-06 17:17