国道は大変
今は関越自動車道が開通して東京から新潟までの道のりはかなり楽になったが、ひと昔前のトラック運送などは国道17号線で険しい山の中を越えて新潟港に辿り着くには大変な時間と燃料と労力を必要したものだ。
1982年当時は関越自動車道も群馬県の沼田あたりまでしか通っていなかったので、そこからは狭い山道の国道を走っていた。
その日も16tのコンテナを新潟港まで届けるため夜の10時過ぎに高島平ターミナルを出た。
助手席には若いドライバーが交代要員として座っているが、あくまでも助手である。
沼田市内を抜けて三国トンネルに向かう登り坂は第1の難所である。対向二車線の狭い道である。4tトラックなら楽だが、16tのトレーラーとなると登るのも容易ではない。道幅と対抗車に気を使いながら、蛇行した山道を進んで行く。
まもなく三国トンネルという所でサイドミラーに何かがコンテナに引っかかっているのが見えた。よく確認したい所だが、山道なのでサイドミラーばかり気にしてはいられない。
そこで国道沿いのつぶれたドライブイン後の空き地に止めて確認する事にした。真っ暗な廃墟の横に電話ボックスの灯りだけが見える。
目をこらすようにサイドミラーを覗き込んだ。
「⁈」コンテナに引っかかっていたのは女の生首だった。助手はこちらの様子を伺っている。
言えない。女の生首が引っかかっているなどとは言えるはずもない。そんな馬鹿な話はない。
確認するためにドアーを開いた。
「コンテナに何か引っかかっているみたいだ。見て来るから待ってろ」
「はい」助手は心細そうにうなづいた。
しかしコンテナには何も無かった。やはり気のせいだったようだ。ほっとして車に戻る。
「何でも無かったよ」声をかけたが返事は無かった。若い助手は首だけになって助手席に転がっていた。
「う、うわぁぁぁ!!!」トラックの高い座席から転落するように飛び降りると、もう1度中を伺った。やはり若い助手は生首になっている。
闇の中に見える電話ボックスの光に誘われるように飛び込んだ。110番…。
現場に到着した警察官は異様な物を見た。助手席に転がる首。そしてコンテナにロープをかけて首を吊っている人間。何があったのか?それより不思議なのは両方とも白骨化している事だった。
鑑定結果は死後20年であった。
彼らに何が起こったのだろうか。
貞っ子
男性/59歳/東京都/会社員
2017-07-15 04:42