本部長、泣きついてもいいですか?案件
あれは彼女とお付き合いして間もなくのこと。
プロレス好きな彼女のお供で後楽園ホールに行った後、
そのまま東京ドームのお化け屋敷に行きました。
彼女はタロット占い師という、
なんとなくいわくありそうな職業の割には
ものすごいビビり。
ホラー系や残酷系の映画だと途中で退出してしまうほど。
その日は多少お酒が入っていたこともあり、勢いで突入する事に。
おいおい、大丈夫かよと、ため息ひとつ。
夕闇せまる遊園地は、それはそれで雰囲気があります。
順番待ちの間に、どんどん酔いはさめて行き、
入場するころには、顔面蒼白状態です。
怖い怖い、いやいや~と叫び声をあげる彼女に
引きづられながら、ずんずん進んでいく。
周りを見ないで突き進む彼女の前に、出口の明かりが。
「ほら、出口だよ」
私の声に反応してぱっと瞳を開けた彼女は満面の笑み。
そのとき。
物陰から隠れていたゾンビやら、ドラキュラやら狼男やら、
なんだか訳のワカラン奴まで一気に出現。
「くぁwせdrftgyふじこlp」
言葉にならない悲鳴を上げた彼女は私を取り残し、
脱兎のごとく出口へ一目散。
あぜんと立ちつくす私。
えーと、君、そんな足早かったっけ?
憐みの眼で私を見つめるお化けたち。
とぼとぼと出口を出て行くと、遥かかなたの建物の蔭から
こちらをのぞき見る彼女の姿。
おいおい、色んな意味で距離が遠すぎるだろ。
彼女と私を見比べながら、かわいそうな子を見る瞳の
順番待ちの方々。とほほ…
違う意味での恐怖体験でした。
STAYGOLD
男性/58歳/東京都/ゲームの企画屋さん
2017-07-20 17:21