白いくねくね
この話は大変有名な話で各地で色々に形を変えて伝えられているものです。
子供の頃の夏休みと言えば8月のお盆に家族で父の実家を訪れるのが決まり事だった。
父の実家はいわゆる田舎で田園風景が美しい農家が点在するのどかな所であった。
父の実家には祖父母と父の兄夫婦。10歳歳上の従兄弟。そして4つ歳上の従姉妹が住んでいた。
4つ歳上の従姉妹は何かと可愛がってくれて、私も「お姉ちゃん」と呼んで、いつもくっ付いて歩いていた。
その日もお姉ちゃんと一緒に近くの小川で水遊びをしようとあぜ道を歩いていた。
家を出てしばらく歩いた頃、青々として田園の遥か向こうの方で白い大きな布を頭からかぶったような人が身体全身をくねくねとくねらせるような変な動きをしながら踊っていた。
「お姉ちゃん…あれ何?」私が言い終わらないうちにお姉ちゃんはすごい力で私を後ろに突き飛ばした。
「お、お姉ちゃん!痛いっ!」
「帰れ!母ちゃんの所へ帰れ!は、早ぐぅぐぐ」
私はお姉ちゃんの様子が急に変わったのが怖くて泣きながら家へ帰った。そして出迎えてくれた祖母に事の顚末を話した。
「お、お前は何ともないかぁ?」祖母は泣きながら私を強く抱きしめた。祖父と父と叔父は血相を変えて外へ出て行った。何故か母や叔母泣いている。
どのくらいの時間が経ったのか。祖父達に連れられて戻って来たお姉ちゃんに以前の面影は無かった。目は虚ろで一言も喋らず、薄笑いを浮かべていた。
あの白い物が何だったのか、お姉ちゃんが何故、あのようになったのか誰も教えてくれなかった。
そして数年後、お姉ちゃんは姿を消した。しかし誰も捜そうとはしなかった。
ただ一言、祖父が「あの子はもう連れて行かれちまった。仕方ねえ。」とつぶやいただけだった。
貞っ子
男性/59歳/東京都/会社員
2017-07-26 23:50