手
就寝前に枕元のスタンドを点けて読書をするのが日課である。
今宵も睡魔に襲われるまで活字を目で追う。
ふと部屋の隅に視線を移すと
暗がりで痩せこけた手がうごめいていた。
何度見直しても手だ。
気味が悪い。
勇気を出してその場所まで見に行った。
手が暗がりに消えて行く。
追いかけるように近づく。
手は無かった。
フローリングと壁と隅に溜まった埃だけ。
ホッとして寝床に戻ろうとした時、
それはそこにあった。
枕の下からうごめく青白い手が…。
貞っ子
男性/59歳/東京都/会社員
2017-07-30 23:01